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英国銀製品のホールマーク

ホールマークとは?

英国製の銀製品にはホールマークと呼ばれる小さな刻印が必ず入っています。
懐中時計に関しても英国時計のシルバーケースには刻印が刻まれています。

ヨーロッパの銀製品にはホールマークと呼ばれる、純度などを証明する刻印が打刻されているものがあり、古くは4世紀の東ローマ帝国まで遡るそうです。
英国のホールマーク制度は14世紀のエドワード1世の時代から法制化され、銀製品はスターリングシルバー(純度92.5%)を満たすことが義務付けられました。
銀は100%の純銀では柔らかすぎて加工が難しいためこれが基準となったようです。
残りの7.5%は銅などで、アンティークシルバーの世界ではスターリングシルバー以上であれば「純銀」と表記するのが通例となっています。

1327年エドワード3世が金細工師組合(Worshipful Company of Goldsmiths)の設立を許可し、ロンドンの本部(Goldsmiths’ Hall)で貴金属(金・銀・プラチナ)を検査し純度を証明する刻印をしていたことから「ホールマーク」の言葉が生まれたようです。
16世紀には財政が逼迫し低品位の銀貨が出回ったことから、1544年に現代と同等のさらにしっかりとしたホールマーク制度が確立しました。

英国以外にもフランスやドイツ、スイスなどにホールマークの制度は古くからありますが、英国のホールマークは純度だけでなく検査された年代や場所、メーカーまで分類され、他国に比べて違反者への罰則を含め厳密に運用されてきたため信用が高いことが特徴です。

 

ホールマークの見かた

英国シルバーホールマークの見方

 

A.メーカーマーク 製造メーカー(工房)の略称が刻印されています。

B.スタンダードマーク       純度を示す刻印です。
スターリングシルバー(92.5%)であればライオンパサントと呼ばれる左向きのライオンのマークです。
ブリタニアシルバー※(95.84%)であれば女神のマークです。
※1697-1720年頃はこちらが基準となっていた時代がある

C.アセイ・オフィス 英国の主要都市に試金鑑定所(アセイ・オフィス)が置かれており、どのアセイ・オフィスで鑑定されたのかがわかります。
主要なものでロンドン(ライオンの顔)バーミンガム(船の錨)シェフィールド(王冠)などがあります。

D.デイト・レター 鑑定された年を示しています。
アルファベットを大小文字、書体や縁取りなどを変えながら使用されておりアッセイ・オフィスによって同じ年でも異なります。
1974年以前は各オフィスによって更新月が違っていたようです。
(ロンドンは5月、バーミンガムとシェフィールドは6月)

E.デューティーマーク 納税を証明するマークです。
1784年から1890年までに作られた銀器には税金がかけられており、当時の国王の横顔が刻印されています。
ただし王の在位年とぴったり合っていない場合があります。



ホールマークの大きさや各刻印の並び順などは銀製品の大きさや刻印されている場所などによってさまざまです。
また、ティーポットの本体と蓋の部分などパーツが分かれる場合は、それぞれのパーツに刻印されていて、途中で修理交換されていたりするとパーツによって異なるホールマークが刻印されていることもあります。
アルバートチェーンのリンクなどの小さな部品にもそれぞれ刻印されていますが、刻印する面積が小さすぎるため、スタンダードマークのみが刻印されていたり、一番大きな部品にのみメーカーマークが刻印されていたりします。

シルバープレート(銀メッキ)のものにも刻印がありますが、純銀のホールマークほどルールが徹底されていないため解読は複雑です。

 

ホールマークの調べ方

ホールマークの調べ方

ホールマークの一覧を解説した書籍がいくつか出版されています。
特にJudith Banister著の「English Silver Hall-Marks」は英国骨董商のバイブルとされているそうです。

こちらのwebサイトでも調べることができます。


【調査手順】

  1. まずはアッセイオフィスを判別します
    年ごとのデイトレターはアッセイオフィスにより異なります

  2. 次にデイトレターのアルファベットを判別します
    大文字・少文字・書体・縁取りなどから判別していきます

    上記1と2が判別できれば製造年が判別できます
    摩耗などによりアッセイオフィスやデイトレターの判別が難しい場合は以下に進みます

  3. デューティーマークの有無を調べます
    デューティーマークがあれば1784-1890年製です
    男性(ジョージⅢ・Ⅳ、ウィリアムⅣ)だと1784-1837年
    女性(ヴィクトリア女王)だと1838-1890年です

  4. メーカーマークを調べます
    メーカーによって活動していた年代を調べることができます

  5. ライオンパサントの形状を調べます
    どんな小さなパーツでも銀製品ならライオンパサントだけはついています
    時代ごとにしっぽや前足などの形状が微妙に異なるので、そこからおおよその時代を調べることができます


銀はやわらかい金属ですので、長年磨いてきた摩耗でホールマークが薄くなっている場合もあります。
しかし薄くなっていてもわずかな刻印の特徴から年代や産地、メーカーなどを調べるのは楽しいものです。

コツをつかめば簡単にわかるようになってきますので、ぜひお手持ちの銀製品を覗いてみてください。