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金銀相場とアンティーク相場の関係性

金や銀などの貴金属は紀元前の古くから通貨として利用されており、現在も国際通貨としての性格を持つ資産として取引されています。

ここ数年で金の価格が上昇している、というニュースは聞いたことがある方も多いと思いますが、銀に関しても同様に国際的な価格が急騰しています。
日本ではここ数年の円安の影響もありその動きが顕著で、2020年コロナ禍前に比べて2倍以上に上昇しました。(2024年4月9日時点)

ここでは、金銀相場とアンティークの市場(主にアンティークシルバー)の関係性についてお話します。

銀価格の推移

1.金銀価格の上昇とアンティーク品の相場

金銀相場の変動によって、素材として金や銀が使用されているアンティーク品の市場価格も変動します。
同じような商品(年代、品質、保存状態、デザインなど)であれば、基本的に金銀の重量が多いほうが高価になります。
しかし、アンティーク品の場合使われている金銀の重さだけで価格が決まるわけではなく、品質やデザイン、保存状態、希少性、需給バランス(人気)など多くの要素が価格に影響します。
銀製品であれば、サルヴァやティーポットなど銀の重量が大きいものは銀相場の影響を受けやすく、カードケースなどの小さいものは影響を受けにくいです。
銀メッキ(シルバープレート)であれば影響はさらに少なくなります。
しかし、金銀相場が上昇している時期は投資対象としての需要が増加するため、シルバープレート製品なども含めてアンティーク市場全体の相場が上がる傾向にあります。


2.金銀比価の変動

現在(2024年4月9日時点)では1gあたりの金価格が12,600円、銀価格が152円と約80倍ほどの差があります。
この倍率のことを「金銀比価」と呼んでいます。
金本位制の廃止や為替相場などもあるので単純に比較はできませんが、長い歴史を見ると現在は金銀比価がとても高い状態です。
アンティークの銀製品が作られた頃の銀の価値は現在よりも相対的に高く、現在の感覚よりも高級なものでした。
ローマ時代のヨーロッパでは約10倍、19世紀中盤ころでも約15倍くらいの価格差だったようです。
日本では幕末頃まで5倍ほどで欧米よりも金銀比価が低かったため、日本の金貨が大量に海外に流出したこともありました。

金銀比価

金銀比価は大規模な鉱脈が見つかったり、新しい精錬技術が開発されたりしたタイミングで大きく変動しています。
近年ではフィルムカメラからデジタルカメラへの移行により、銀の工業需要の多くを占めていた銀塩フィルムの需要が一気に落ちたこともあり、金銀比価が高くなっています。


3.銀価格の高騰とアンティークシルバーの廃棄



アンティークの銀製品の価格は、基本的に使われている銀の重量分の価値以下になることはありません。
しかし、このような急激な相場上昇の場合アンティーク銀製品の相場と銀のスクラップ価格の相場が逆転してしまうことがあります。
特に、状態が悪く汚れていたり使用するために修理が必要なものなどは、アンティーク品として販売するよりもスクラップにして銀地金にしてしまった方が高く売れる、ということになります。
現在は銀製品を修理する職人が減ってきており、修理費用が上昇しているというのも原因でしょう。

スクラップにされることで貴重なアンティーク品は失われることとなってしまい、そうしたことを繰り返すうちに現在に残るアンティーク品の数は減っていくことになります。
当時のアンティーク品と同じものを作ろうとしても、現在の技術では不可能なものもたくさんあります。
本来まだ価値があるはずのアンティーク品がスクラップにされるのを防ぐため、アンティークの魅力を伝えてその価値を維持していくことも自分の役割だと思っています。



まとめ

素材に金や銀を使用したアンティーク品の価格は金銀相場の変動に影響を受けることがあります。
しかし、アンティーク品の価値は金銀相場だけでなくいろいろな要素がからむため、金銀投資の対象としてだけでなくアンティーク品としての魅力を見極めることが重要です。
もし今後、金銀価格が下がったとしてもその歴史的な背景や芸術性などの価値が下がるわけではありません。