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ワシントン条約(CITES)とアンティーク

アンティーク品の中には、現在の法律では使用や輸入が制限されている素材が使用されているものがあります。
そうした規制の1つに「ワシントン条約」と呼ばれる国際条約があり、象牙やべっ甲などが使用されたアンティーク品の輸入は、現在ではとても難しくなっています。

この記事ではワシントン条約の内容や、そこで禁止されている素材などについて解説いたします。

1.「ワシントン条約」とは?

正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)」で、野生動植物の保護を目的とした国際的な取り決めです 。
1973年にワシントンD.C.で採択されたため、この名前で広く知られています 。   

この条約は、絶滅の危機に瀕している、またはその可能性がある野生動植物の国際取引を規制することで、種の保存を図ることを目指しています 。日本は1980年にこの条約に加盟し、国内法を整備して条約の内容を実行しています 。   

ワシントン条約の規制対象は、生きている動植物だけでなく、それらから作られた製品も含まれます 。  ワシントン条約では、保護の必要性に応じて、対象となる種を3つの「附属書」に分類しています 。   

附属書Ⅰ:絶滅の恐れが最も高い種がリストアップされており、商業目的の取引は原則として禁止されています 。
  
附属書Ⅱ:現時点では絶滅の恐れはないものの、取引を規制しないと将来的に絶滅する可能性がある種が含まれます。商業取引は可能ですが、輸出国の許可が必要です 。
  
附属書Ⅲ:特定の国が、自国内での保護のために他国の協力を必要としている種が掲載されています。輸出国の許可や証明書が必要となることがあります 。   

※これらの附属書は、定期的に見直され、必要に応じて改正されます 。   

日本税関:ワシントン条約


2.規制対象となる素材

西洋アンティークには、ワシントン条約で規制されている素材が使われていることがあります。代表的な素材をいくつかご紹介します。

・象牙

ゾウの牙から作られる象牙は、美しい光沢と加工のしやすさから、様々な装飾品の素材として使われてきました 。
ステッキのハンドルや家具や箱の象嵌、彫刻品などによく使用されています。
しかし、象牙採取のためのゾウの密猟が深刻な問題となり、ワシントン条約で厳しく規制されるようになりました 。   

・鼈甲(べっこう)

ウミガメの一種であるタイマイの甲羅から作られる鼈甲は、独特の模様と光沢が特徴で、装飾品や工芸品に用いられてきました 。
櫛やメガネのフレーム、家具や箱の装飾などによく使用されています。
タイマイも絶滅の危機に瀕しており、ワシントン条約で保護されています 。   

・ローズウッド、マホガニー

ローズウッドやマホガニーは高級木材で、家具や楽器などに使われてきました 。
伐採が進み、一部の種がワシントン条約の規制対象となっています 。
いくつかの品種がありますが「ブラジリアン・ローズウッド」は附属書Ⅰに記載されています。 
2019年以降、楽器の場合は一部例外措置が適用されています。

・その他の素材

上記以外にも、ワニ革、ヘビ革、サンゴ、特定の動物の毛皮などが、ワシントン条約の規制対象となる場合があります 。   

 

3.日本に輸入する際の注意点

象牙や鼈甲、ブラジリアン・ローズウッドなど、附属書Ⅰに掲載されている素材を含む場合、原則としてとして商業目的の輸入は禁止されています。
ただし、その品物がワシントン条約で附属書Ⅰに掲載される前から存在していたとする「条約適用前取得」の証明ができれば輸入は可能です。
ワシントン条約が発行されたのは1975年ですので、それ以前に造られたアンティーク品は対象外のように思われるかもしれません。

しかし、アンティークの場合は途中で修復されていたりして、その素材が本当に条約適用以前のものであることを証明するのは難しい場合が多いです。
証明するための書類に不備があれば税関で差し止められ輸入はできません。

また、ローズウッドやワニ革などは詳細な品種によって、記載される附属書が異なる場合があるため注意が必要です。

アンティーク品では、メインとなる素材でなくても一部の極小さなパーツに象牙などのワシントン条約で規制された素材が使用されているものがあります。
ティーポットのハンドルに熱が伝わらないように挟み込まれている小さなパーツなどです。
このようなティーポットを輸入する場合、オリジナルのパーツは外してもらい、規制の対象になっていない水牛の角や樹脂などのパーツに交換してから送ってもらうことになります。

商業目的でなく、個人の使用目的でお土産などとして購入して日本に持ち帰る場合でも、正式な手続きがなければ持ち込みを差し止められることもあります。

ワシントン条約で規制される前に日本に輸入されたものや、正式な手続きで輸入されたものであれば、日本国内での売買は可能です。
ただし、象牙やべっ甲などは国内取引であってもワシントン条約に準じた日本国内の法律である「種の保存法」によって制限されており、取り扱う場合は国の事業者登録が必要です。

環境省:種の保存法とは


まとめ

象牙やべっ甲などのワシントン条約で輸出入が規制されているアンティーク品は、商業目的で輸入することが禁止されていたり、複雑な手続きが必要となります。
ですので、当店ではそうした素材を使ったアンティーク品は基本的に取り扱っていません。

今後、対象となる素材や規制内容が変更になる場合もあります。
不安な点や不明な点があれば、関係機関に問い合わせるなどして正確な情報を得るようにしてください。

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