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懐中時計のゼンマイの巻き方

機械式時計の動力

アンティークの懐中時計はすべてゼンマイを動力とした機械式時計です。
クオーツ式時計やデジタル時計のように電池やバッテリーなどを使いません。
巻き上げたゼンマイが少しずつほどけていくことで動力を生み出します。

ゼンマイを完全に巻いてから止まるまでの時間をパワーリザーブと呼びます。
アンティークの懐中時計の場合パワーリザーブは通常30時間前後のものが多いです。
昔の人は1日1回決まった時間に時計のゼンマイを巻くのがルーチンだったのでしょう。

懐中時計のゼンマイの巻き方は手巻き(リューズ巻き)と鍵巻きの2種類があります。
ちょっとしたコツも含めてそれぞれについて動画を含めて説明します。

 

手巻き(リューズ巻き)

リューズ巻き

リューズ(竜頭)を回してゼンマイを巻く方式です。

時計の上か右側についているキザギザのついた回転する部分がリューズで、これがついている懐中時計は手巻きとなります。
もともとは鍵巻きが主流でしたが19世紀末頃には手巻きが主流となります。

リューズ巻き

ゼンマイを巻くときは時計を落とさないようにしっかりと持ってください。
リューズを2本の指でつまみ、上から見て右回し(時計回り)にまわしていきます。
反対側(左回し)にも回転しますが空回りする状態です。

力はそれほど必要ありませんので、優しくゆっくりと巻いていってください。
巻いていくとだんだん抵抗を感じるようになり、ゼンマイが一杯まで巻き上がるとそれ以上巻けなくなります。
それ以上は無理に力をかけて巻かないようにしてください。

コハゼ

ゼンマイを巻く際、リューズを回した後に指を離して持ち直すのではなく、リューズを持ったまま逆回転させてから巻いたほうが良いとされます。
手を離すさ際に「コハゼ」と呼ばれるゼンマイの逆転防止のための小さな部品に急に力がかかってしまうため、長期的に繰り返すと故障の原因となるからです。

以上を踏まえて動画で説明いたします。

 

鍵巻き

鍵巻き
時計にリューズがついていない場合は鍵巻きとなります。

鍵巻き(1つ穴) 鍵巻き(2ツ穴)
裏蓋などを開けたところに鍵を入れる鍵穴があります。
穴が1つの場合はそれがゼンマイを回す鍵穴です。2つの場合は中央から離れている方がゼンマイを回す鍵穴で、中央付近も穴は時刻合わせ用です。
鍵のサイズは時計によって決まっていますので、その時計に合った鍵を使ってください。

鍵の巻き方
鍵を回す方向は時計によって異なります。
スイス製やアメリカ製の機械は右回しが多く、英国製の機械は左回しが多いです。
鍵をゆっくりまわしてカチカチと音がするほうが巻き上げる方向です。
反対側には回りませんので無理に回さないようにしてください。

以上を踏まえて動画で説明いたします。

 

よくある質問

ゼンマイはいっぱいまで巻き上げないほうがいいのか?

「ゼンマイはいっぱいまで巻き上げないほうが良い」と言われる場合があります。
ゼンマイをフルに巻くとゼンマイの持つ力が大きくゼンマイや部品に負荷がかかるため、ゼンマイが切れたり部品に負荷がかかるというのが理由です。
私の経験上それほど気にしすぎなくてもいいと思っていますが、貴重な時計や古くて動きが悪い時計は少し気をつけたほうが良いでしょう。
ご自分の回し方で何回くらい回せばゼンマイが完全に巻けるのかを把握した上で、8割くらいの回数で巻いてみてください。

リューズが巻けない、リューズが硬い

リューズが巻けない場合は、ゼンマイが巻き上げられた状態で時計が動かない状態の可能性が高いです。
巻けるけどリューズが硬い場合も、リューズに何か問題が発生している可能性があります。
リューズは時計の中でも一番直接手で動かされ、力がかかるので壊れやすい部品です。
基本的に消耗品ですので、巻きづらくなったら交換する必要があります。
どちらの場合もまずは時計修理ができるお店に相談してみてください。

ゼンマイが巻ききれない

正しい方向にリューズや鍵をいくら回してもゼンマイの巻き止まりがない状態です。
この場合はほとんどがゼンマイが切れていることが原因です。
ゼンマイの切れ方によってはゼンマイが切れた状態でも少しだけゼンマイが巻けて、本来よりも短い時間動く場合もあります。
どちらにしてもゼンマイの交換が必要となります。
ゼンマイもリューズと同じく負荷がかかる部品なので、基本的には消耗品です。

「自動巻き」と呼ばれる、時計を振ることによって自動でゼンマイが巻かれる仕組みの機械の場合は巻き止まりはありませんが、懐中時計には自動巻きの機械のものはほとんどありません。

 

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